大会長挨拶

この度、「第49回日本産婦人科医会性教育指導セミナー全国大会」を、ここ高知の地で開催する運びとなりました。全国から多くの皆様をお迎えできますことを、実行委員会一同、心より光栄に存じます。
我が国の性教育は欧米諸国と比べ立ち後れていることが以前より指摘されています。日本の性教育は、文部科学省の「学習指導要領」に基づいた「科学的知識」の習得に重点が置かれてきました。しかし「はどめ規定」による内容の空洞化、教員の過度な負担、学校間格差、「人権」や「多様性」の視点欠如など様々な問題点が指摘されています。これに対し欧米諸国では、権利や多様性、人間関係を重視するアプローチからの「包括的性教育(CSE)」が提唱され、ユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に基づく性教育が多数の国で行われています。近年、我が国でも包括的性教育の必要性が叫ばれ、この日本産婦人科医会性教育指導セミナー全国大会でも過去に何度となく取り上げられてきました。しかし残念ながら、未だ我が国において包括的性教育が根付いたと言える状況にはありません。
高知県は、全国一少子化が進行している、いわば少子化先進県であります。全国一出生数の少ないこの高知県で、開催されるこの大会は、少子化の進む我が国の各地方のモデルともなり、全国へ新しい性教育の拡がりを巻き起こしていく絶好のチャンスになると考えます。
高知県は、明治維新で大きな役割を果たし、明治の時代に板垣退助を筆頭とする自由民権運動の発祥となった地であります。自由民権運動の理論的指導者であり、明治憲法が作られる前の民間草案の中で最も民主的で完成度が高いと言われた「東洋大日本国国憲案」を作成した植木枝盛は「自由は土佐の山間より」と掲げ、日本の夜明けを切り拓きました。この高知の地から、次世代のための新しい教育の在り方、そして心と身体の自由と健康を守るための性教育(包括的性教育)を発信していきたいと思います。子どもたちが少ない地方で、いかに性教育、とくに包括的性教育が育まれてきているかということを皆様と共有し、全国における包括的性教育の展開が大きく進むきっかけになればと期待します。
包括的性教育は、単独の職種が努力しても成し遂げられるものではありません、学校、医療関係者、行政はもちろん、周囲の人間、家族や保護者、すなわち社会全体が一体となって同じ方向を向きつつ、幼少から思春期に至るまで継続的にそして計画的に進めていく必要があります。過疎の地域でそれをどのように成し遂げていくのか、高知県の状況を詳細に提示させていただき、みんなで考え、そして未来への方向を示す大会となることを祈念し、しっかりと準備していきたいと思います。性教育に携わる皆様の多数の御来高をお待ちしております。